「波動を上げるとよい」と言われても、何をどうすればよいのかは分かりにくいものです。検索すれば習慣の一覧はいくらでも出てきますが、続けても手応えがない、そもそも本当に効くのか分からない、という状態になりやすい部分でもあります。この記事では、波動という言葉が何を指しているのかを整理したうえで、生活のどこを変えると実際に気分が動くのかを、公的な指針の数値とあわせて説明します。あわせて、上げようとするほど苦しくなるときに何が起きているのか、波動を理由にお金を使う前に確かめたいことも取り上げます。読み終えたときに、今日ひとつだけ変えるならどこか、を決められる状態を目指します。
波動とは何を指す言葉なのか
スピリチュアルの文脈で使われている意味
波動は、スピリチュアルの分野で「その人が発しているエネルギーの質」を表す言葉として使われます。機嫌がよく落ち着いている状態を波動が高い、いらだちや不安が続く状態を波動が低い、と表現します。決まった定義があるわけではないので、書き手によって指す範囲は変わります。
この記事では、波動を「その人の気分と体調が、ふるまいを通して周りに伝わっていく状態」という意味で使います。波動を上げるとは、その状態を整えることだと考えてください。
物理学の「波動」とは別の言葉です
物理学にも波動という用語があります。ただしこちらは、音や光が波として伝わる現象を指す言葉です。スピリチュアルの波動とは別のもので、同じ漢字を使っているだけだと考えてください。
検索すると、量子力学を持ち出して波動を説明する記事が見つかります。量子力学は原子より小さい世界のふるまいを扱う理論で、人の気分や運の良し悪しを説明する理論ではありません。量子力学を根拠として示す書き方は、根拠にはなっていないと考えるほうが安全です。この記事では、確かめられている部分とそうでない部分を分けて書きます。なお、いま自分がどちら側に寄っているかを先に知りたい方は、いまの自分の状態をたしかめる目安を別の記事にまとめています。
「波動を上げる」で変わるもの・変わらないもの
生活習慣から説明がつく部分
波動を上げる方法として挙げられる項目の多くは、睡眠、運動、食事、掃除といった生活習慣です。これらが気分に影響することは分かっていて、公的な指針にも数値が示されています。つまり「波動が上がった」と感じる変化のうち、かなりの部分は生活が整った結果として説明がつきます。
ここは誰がやっても同じ方向に働く部分です。効果が読みやすいので、最初に手をつける場所としても向いています。
説明がつかない部分をどう扱うか
一方で、意味のある偶然が増えた、良い縁がつながった、といった変化は生活習慣では説明がつきません。偶然の一致は、意識しはじめると目につきやすくなる性質があります。数が増えたのか、気づく回数が増えたのかは、本人には区別がつきません。
だからといって、そこに意味を見いだすことが悪いわけではありません。ただし、説明がつかない部分を根拠に高額な買い物をすると、あとで困ることになります。二つを分けて扱えば、どちらも安心して楽しめます。
| 変化の種類 | 当てはまるもの |
|---|---|
| 生活習慣から説明がつくもの | 寝起きが軽くなる、気分の落ち込みが減る、人あたりが柔らかくなる、集中が続く。睡眠や運動を整えた結果として起きる変化です |
| 説明がつかないもの | 意味のある偶然が増える、良い縁がつながる、直感が当たる。楽しむのは自由ですが、お金を使う根拠にはしないでください |
生活から整える
ここからは、公的な指針に数値が示されている項目から扱います。効果が読みやすく、今日から始められる部分です。
睡眠を確保する
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人について、少なくとも6時間以上を目安に睡眠時間を確保することを推奨しています。あわせて、睡眠で休養がとれた感覚を高めることを重視しています。必要な時間には個人差があるとも書かれています。
時間だけを長くしても、休めた感じがなければ効果は薄くなります。寝る前に強い光を浴びない、就寝と起床の時刻を大きくずらさない、といった調整のほうが先に効きます。
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月)
体を動かす
同じく厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」にも数値があります。成人については、歩行と同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うことが推奨されています。1日およそ8,000歩以上に相当する量です。あわせて、筋力トレーニングを週2日から3日行うことと、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにすることを挙げています。
いきなりすべてを満たそうとすると続きません。まずは座っている時間を短くするところから始めるほうが現実的です。1時間に1回立ち上がるだけでも、体の重さは変わります。
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月)
食事と体温
波動を上げる食べ物として、特定の食品が挙げられることがあります。ただし、ある食品を食べれば波動が上がるという裏づけは見当たりません。食品そのものに特別な力があるという説明は、いまのところ確かめられていません。
確かなのは、食事を抜く日が続いたり、偏りが大きくなったりすると、気分が下がりやすくなることです。朝に何か口にする、温かい飲みものを一杯とる、といった調整のほうが効果は読みやすくなります。
部屋と持ち物を減らす
掃除や断捨離は、この分野の記事のほとんどが挙げる項目です。効く理由は分かりやすくて、目に入る情報が減ると、判断に使う労力が減るためです。散らかった部屋では、片づけなければという思いが一日中残ります。
すべてを一度に片づける必要はありません。毎日必ず目に入る場所を1か所だけ決めて、そこを空にするところから始めてください。
- ✓夜のうちに寝る時刻を決めて、その30分前に画面を閉じる
- ✓1時間に1回は立ち上がって、部屋の中を歩く
- ✓朝に温かい飲みものを一杯とる
- ✓机の上か玄関のどちらか、1か所だけを空にする
気持ちの向きを整える
感謝や言葉を使うときの注意
感謝を伝える、前向きな言葉を使う、といった方法は広く紹介されています。人に感謝を伝えると関係がよくなることは確かで、その結果として自分の気分が変わることもあります。ここまでは行動の話です。
ただし、言葉そのものに力があるという説明には裏づけがありません。特定の言葉を唱えれば状況が変わる、という受け止め方をすると、変わらなかったときに自分を責めることになります。行動としての感謝と、言葉の力としての感謝は、分けて考えてください。
ポジティブでいようとして苦しくなるとき
落ち込んでいるときに無理に明るくふるまうと、負担が増えます。感情を抑え込むほど、あとで疲れが出やすくなります。
波動を上げるとは、いつも上機嫌でいることではありません。落ちているときに落ちていると認めるほうが、戻るのは早くなります。今日は下がっている日だと決めて、予定を減らすのも立派な対処です。
上げようとするほど下がるとき、何が起きているか
方法を実践しているのに前より苦しい、という状態は珍しくありません。多くの場合、次の3つのどれかが起きています。
我慢して明るくふるまう
一つ目は、感情を抑えて明るくふるまい続けることです。周りからは波動が高い人として見えますが、本人の負担は積み上がっていきます。長く続けると、ある時点で一気に落ちます。
人と比べる
二つ目は、他人と比べることです。波動が高いとされる人の様子を見て、自分は違うと感じた瞬間から下がりはじめます。比べる相手は他人ではなく、先週の自分にしてください。
情報を追いすぎる
三つ目は、情報を集めすぎることです。方法を知るほど、できていないことが増えていきます。1つ選んで2週間続けるほうが、10個知っているより先に進みます。
体の不調が続いているときは、覚醒や好転反応として語られる変化と、体調や生活の変化を切り分けたほうが安全です。体調や生活の変化と切り分けて考える方法を別の記事にまとめています。
波動を理由にお金を使う前に確かめたいこと
開運商法として相談が寄せられている手口
波動や運気を理由にした販売については、全国の消費生活センターに相談が寄せられています。消費者庁の資料によると、全国消費生活情報ネットワークに「開運商法」のキーワードで登録された相談件数は、次のように推移しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2017年度 | 1,424件 |
| 2018年度 | 1,559件 |
| 2019年度 | 1,312件 |
| 2020年度 | 1,177件 |
| 2021年度 | 1,435件 |
この資料より新しい年度別の公表は、確認できた範囲では見当たりませんでした。数値は2021年度までのものとして読んでください。
出典:消費者庁「霊感商法(開運商法)に関する消費生活相談について」資料4(2022年8月26日)
このキーワードは、購入しなければ不幸になる、購入すれば不幸から免れる、といった説明を伴う勧誘に対して付けられます。運勢が開ける、幸福になる、というセールストークも含まれます。商品だけでなく、占いや祈とうのサービスも対象になります。
出典:消費者庁「不当寄附勧誘防止法の施行状況について」(令和7年6月)
つまり、不安をあおってから購入に進ませる形が共通しています。波動が下がっている、このままだと悪いことが起きる、という話から高額な商品や施術に向かう流れになったら、いったん立ち止まってください。
- ✕このままでは悪いことが起きる、と不安を強める説明から始まる
- ✕今日中に決めないと間に合わない、と期限を切られる
- ✕金額の根拠を聞いても、波動やご縁といった言葉でしか説明されない
- ✕家族や友人に相談してから決めたい、と言うと止められる
契約を取り消せる場合があります
霊感などの知見を用いて、そのままでは重大な不利益が生じると告げられて契約した場合、消費者契約法にもとづいて契約を取り消せることがあります。2022年の臨時国会での改正により、取り消せる期間が延ばされました。追認できるときから3年間、契約を結んだときから10年間が期限です。
出典:消費者庁「消費者契約法 逐条解説」第7条(取消権の行使期間等)
困ったときは、消費者ホットライン「188」に電話をすると、近くの相談窓口を案内してもらえます。ひとりで判断する前に、まず相談してください。
変化が感じられないときの考え方
生活を整えても、すぐに変わるとはかぎりません。睡眠や運動の効果は数日では出ないので、まず2週間、1つだけ続けてから判断してください。手応えのなさは、やり方が悪いからではなく、期間が短いだけのことがあります。
それでも変わらないときは、原因が生活習慣の外にあるかもしれません。人間関係や仕事の負荷は、自分ひとりでは動かせないことが多い部分です。体の不調が続いているなら、まず医療機関で相談してください。
気持ちの整理がつかないだけであれば、話を聞いてもらう相手を探すのも一つの手です。ただし、相談先として並んでいる評判は、そのままでは判断の材料になりません。口コミの読み方を整理した記事で、何を見れば見分けられるかをまとめています。
よくある質問
波動が低い人にはどんな特徴がありますか
いらだちや不安が続いている、人の悪口が増える、体が重く感じる、といった状態が挙げられます。ただしこれらは、睡眠不足や疲労が続いているときにも同じように出ます。特徴に当てはまるかどうかより、最近よく眠れているかを先に確かめてください。
一瞬で波動を上げる方法はありますか
その場で気分を切り替える方法はあります。窓を開けて外の空気を入れる、立ち上がって数分歩く、湯を沸かして温かいものを飲む、といった行動です。ただし効果は一時的なもので、続けるには生活のほうを整える必要があります。
波動が高くなる前にはどんな変化がありますか
前兆として語られる変化には、眠気が強くなる、人間関係が入れ替わる、興味の対象が変わる、といったものがあります。ただしこれらは季節や生活の変化でも起こります。前兆かどうかを見分ける方法は確立されていないので、体調の変化として説明がつかないかを先に確かめるほうが安全です。
「ありがとう」より波動の高い言葉はありますか
言葉に順位をつける根拠は見当たりません。感謝を伝えると関係がよくなることは確かですが、それは言葉の力ではなく、伝えるという行動の結果です。どの言葉を選ぶかより、実際に誰かに伝えるかどうかのほうが影響します。
波動を上げる食べ物はありますか
特定の食品を食べれば波動が上がるという裏づけは見当たりません。一方で、欠食や偏りが続くと気分が下がりやすくなることは知られています。食品を選ぶより、抜かずに食べることのほうが先です。
波動が上がるときの好転反応とは何ですか
好転反応は、良くなる過程で一時的に不調が出るという考え方です。医学的に確かめられた現象ではないので、不調の説明として使うのは危険です。発熱や強い痛み、長く続く倦怠感がある場合は、好転反応と考えずに医療機関で相談してください。
まとめ
波動を上げる方法として挙げられる項目の多くは、睡眠や運動といった生活習慣です。この部分には公的な指針の数値があり、誰がやっても同じ方向に働きます。まずはここから、1つだけ選んで2週間続けてみてください。
意味のある偶然が増えるといった変化は、生活習慣では説明がつきません。楽しむのは自由ですが、お金を使う根拠にはしないでください。不安をあおって購入を迫られたら、その場では決めず、消費者ホットライン「188」に相談してください。
そして、上げようとして苦しくなったときは、いったん手を止めてください。落ちている日を落ちている日として認めるほうが、戻るのは早くなります。

